(第十八話 一日に二つの季節)
こども達の運動会も終わり、10月に入った途端に肌寒くなり出しました。
ススキがあちらこちらに伸び、冷たい風に揺れている様は、人恋しくさせます。
何もしない休日の午後から飲むビールに、ちょっと酔ったときですね。
何もしないで秋を楽しんでいたら、急に冬がやってきました。
日中はまだまだ秋の陽気に包まれ、ログの中よりも外の方がポカポカしていて、
テラスで本を読んだり、昼寝をしたり、ダラダラと気持ちがいいのですが、
夕方になると冷え込んできて、暗くなる頃には気温も10度を切るようになりました。
<夫婦の会話>
女房 「そろそろ暖炉に火を入れない?」
亭主 『まだいいんじゃないの?昼間は暖かいし、もう少しダラダラさせてよ。』
女房 「でも薪割りして乾燥させといたほうがいいんじゃないの?」
亭主 『そうなんだよなぁ?、でもなぁ、昼間気持ちよくてな?
力仕事する気にならんのよ。』
『もう2,3日待ってよ、ボチボチやり始めるから・・・・』
女房 「暖炉の火を見ながらウイスキー飲むと美味しいんでしょ」
ガーン、そうでした、冬の間の唯一の楽しみ。
暖炉の火を眺めながら、お気に入りのシングルモルトを飲る。
これを言われると、弱いですなぁ。
仕方なく重い腰を持ち上げ、倉庫からチェーンソーを出してきて、
乾燥させるために、去年からログの裏に並べておいた杉の木を
切り分けることから始めました。
これを暖炉に入れるちょうどいい大きさに、斧で割っていきます。
薪割りは重労働ですが、暖炉で燃える火を想像すると苦ではありません。
重たい斧を振り上げ、汗びっしょになって、並べた薪を眺めながら
飲むビールの旨さといったら、これもまたね・・・・
ほろほろ酔ってきだし、紅らいだ山を眺めながら深まる秋を想っていると、
そろそろ、かなぁ???
採りたてのアレをバターで炒めて軽く塩こしょうすると、ビールの肴に最高やわな?。
ちょっと見に行ってみよか。。。。
こういう時だけは、腰が軽く上がる。
ビニール袋をポケットに突っ込んで、
『ちょっと行ってくるわ』
「えっ、どこいくの?」
『ちょっと山・・・』
車で林道を上がって行くと、窓から冷たい風が入ってくる。
奥に行けば行くほど、山の様子も変わってくる。
途中で車を乗り捨て、トボトボと山へ入って行く。
雑木林は秋の色に変わり、短い秋をじっくりと楽しむように、
静か?に陽の光を浴びている。 綺麗だ。
『しもた?、ビール持ってきたらよかった』 思わず独り言・・・・
誰もいない山の中へ、トボトボ足を進める。
20分くらい歩けばお目当てのアレはあるはずだ。
途中で猪がミミズでも探したのか? 土を掘り起こした後がある。
『おいおい、先に食わんでくれよなぁ?』
もう少し、といったところで、今度は突然鹿がビックリしたように走り抜けていった。
『おいおい、お前もかよ。 お願いだから先に食わんでくれよ?』
ヒヒヒ、到着到着。
杉の枯れ木の下を、よっこら覗いてみる・・・・
『あった! やたっ!』
『あ?、でもまだ少ないなぁ?。 もっと、うほっ、と出てないと申し訳ないなぁ?。
これだけだと、お吸い物の具にしかならないなぁ?。
しゃーないな、2,3日してからまた来るか・・・・』 なんてブツブツ独り言。
お目当てのアレ。
それは「杉ヒラタケ」というキノコです。
杉の古い切り株や枯れた倒木に、真っ白で耳のように横に生えるので、
「杉ミミ」なんて言ったりもします。
これを生え際の根の部分を少し残して採ります。(来年も生えるように)
水の入ったボールに入れておくと、小さな虫やら出てきますので
それからよく水気を取って、炒めて食べたり、
お吸い物や味噌汁の具にすると美味しいのです。
「秋味」ってなビールを飲みながら、『どこが秋の味やねん』て思ったりしながらも、
気持ちをいっぱい秋味にして、秋の味覚を楽しむのも、いいだろうな。
夜には暖炉に火を入れて、ウイスキーを飲りながら女房と話すのも楽しい一時です。
昼間は秋を楽しみ、夜は冬を楽しむ。
山暮らしの、今が一番いい季節です。
昨日は一日雨降ってたし、明日ぐらいひょっとすると・・・・
秋味な気持ちで、もう一度山へ入りますかね。